白銀の女神 紅の王Ⅱ
お前一人だと言っているだろ
王城の中庭―――――
小鳥の鳴き声が聞こえる静かな昼さがり。
クッキーが綺麗に焼けたと嬉しそうにやって来たニーナに誘われて、中庭でティータイムを楽しむ事になった。
カチャ…カチャ…と陶器の音を立てながら、持ってきた台車の上で準備をするニーナ。
「イースト地区はどうでしたか?」
紅茶の葉を蒸らしている間、ニーナがそう聞く。
「何だか寂しい町だったわ……」
「イースト地区は荒れていますからね。大事なくて良かったです。」
そう言って微笑むニーナ。
結局、イースト地区へはついて行っただけ。
向こうへ行ってもシルバは忙しく動いていたし、常に私を横に置いていたからどこへも行けなかった。
といっても、イースト地区は聞いていたよりも治安が悪く見えて。
城下町の様な賑わいなどない所だったから、どちらにせよ行くところなんてなかったんだけど…
そんな中、唯一の気晴らしになったのが…
キャンッ!
王城の外庭からかけてくる子犬。
まだ短い手足で必死にかけてくる姿は愛らしい。
「ニコ。」
思わず微笑み、子犬の名を呼ぶ。
「さっきまでここに居たのに、どこに行っていたんでしょうね。」
紅茶をカップに注ぐニーナが呆れ顔でそう言う。