白銀の女神 紅の王Ⅱ
「シルバ様は幼少のころから周囲に心を許せる相手が少なかったと聞きました。きっと、幼いながらも生き抜くための処世術を自然と身につけていらっしゃったんでしょうね。」
幼いころに両親を亡くしたんだからそうなるわよね…
しかも両親を殺したのは家臣。
一番近い存在である彼らに裏切られたのだから慎重にもなるわ。
幼かったシルバのことを思うと、キュッと胸が締め付けられた。
しかし、ニーナは「けど…」と言いながらふわりと笑う。
「そのシルバ様がエレナ様のことになるといろんな表情をするんですよ。」
本当に自分の事のように嬉しがりながらほほ笑むニーナ。
「エレナ様は本当にすごいですわ。」
「あ、ありがとう…」
なんだか照れくさくてほんのり頬を染めながら答える。
思えば最初の頃よりもいろんな表情を見せてくれているのかも。
焦った表情だとか、一瞬見せる笑みだとか…
普段シルバは笑わないから、ふとした時に見せる笑顔は心臓に悪い。
けど、シルバが笑ってくれたらとても嬉しい。
少しでもシルバが安堵できる場所を作れているってこと?
そうならいいんだけど…
うーん、と小さく唸りながら悩む私にクスクスと笑うニーナ。
「そろそろ中に入りませんか?今日はお昼から天気が崩れると言っていましたから。」
「そうね、戻りましょうか。」
空を仰げば薄く灰色の雲が張り出していた。