白銀の女神 紅の王Ⅱ
「では片づけますね……あ!私洗濯物を干したままでした!」
意気揚々とテーブルに並べられたティーポットやカップを片づけようとした手がぴたりと止まる。
まずい…と言う顔をするニーナにクスクスと笑う。
「行ってきて。洗濯物が濡れてしまっては大変。」
「すみません、先に行ってきますね。」
そう言って、バッと走っていくニーナ。
こういうところは年相応だな…と思う。
外庭に向かっていくニーナを見送っていれば、走っていた足を止めてくるりとこちらを振り返る。
どうしたのだろうか…と思っていれば、ニーナが大きな声でこちらに呼びかける。
「それはこのままにしておいて下さい。私が後から片づけに来ますので。」
それ…とは、この机の上にあるティーポットやカップの事だろう。
ニーナは律儀にもそれだけを伝えるために足を止めてそう言ったのだった。
「分かったから、早く行ってらっしゃい。」
負けじと声を張ってそう言えば、ニーナは「はい!」とほっとしたような表情をして、再び駆けだした。
「ふぅ…さて……」
ニーナが見えなくなったことを確認して一息つく。
そして、テーブルの上のティーカップを片づけ始める。
「私たちも戻りましょう、ニコ。」
高級そうなカップを丁寧にトレイに乗せて持ち上げニコに呼びかければ、キャンッ!と尻尾を振って答える。
中庭を後にする頃にはポツ…ポツ…と雨が降り出していた――――