白銀の女神 紅の王Ⅱ
今まで婚儀を上げなかったのは、契約がなくとも伝わっていると思っていたからだ。
まぁ…結果的に伝わっていなかったからこそこんな回りくどい方法を取らなければならなかったのだがな。
もう二度目はないと思いつつも相手はエレナ。
逃げられることのないよう、奪われることのないよう繋ぎ止めなくてはならない。
その方法が結婚と言うならば、進んでする。
どうせ婚儀が早まっただけのことだ。
俺にとっての妃はエレナしかいない。
しかし目の前のエレナはそうは思っていないらしく…
「私が…シルバと……?」
エストの姫と結婚しないでほしいと言ったくせに驚くのか…
つくづくおかしい奴だ。
「本当に…?」
「不満か?」
疑い深いエレナにそう聞けば、ブンブンと勢いよく首を横に振るエレナ。
それが可笑しく、今日何度目か分からない笑みを浮かべた。
そして、今日のために急いで用意させたものを取り出し…
「左手を出せ。」
何のことか分からないながらも左手を差し出すエレナの小さい手を取り、それをはめる。
「これ……」
左手の薬指に収まったそれを見つめ、エレナが小さく呟く。
エレナの薬指にはルビーとダイヤがちりばめられた細い指輪。