Birth.117.121

当時勤務していた自動車修理関係の仕事場は、吊り上げられていたはずの車が地面に落下し、横を向いてボンネットを開けていた。

古いブロック塀には僅かにヒビが入り、一部が崩れ落ちていた。

大阪の街は比較的天災に見舞われにくい。

いつもそうだ。
いつもそうだった。

経験した事のない被害を、どこかの災害を、いつもテレビの中で知る。

台風も、津波も、雪崩も、火山も、大雨も、洪水も、戦争も…...


地震も。


そして時が経ち、何時しか自然に忘れて行くのだ。

いや、忘れる訳でも記憶から消える訳でもない。

ただ、記憶自体が被害者と比べ、意思に関係なく、元々あまりにも薄く軽いのか。


< 6 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop