四十階段物語



深く皺がたたまれているその顔はとうの昔に生気を失ったように暗く、そして、涙の跡が幾つもうかがえた。



「初代の校長・・・飯田尚樹さん、だろ?」

「・・・知っているのか」

「一年生の学校紹介で校長室に入った時、写真を見た」

「なるほどな・・・」



目の縁にたまった涙が、瞬きをするたびに零れ落ちる。



「でも、写真とはえらく顔が違わないか?写真は30代くらいだったけど、あれから60年経ってもこんなに変わるものか?」

「90にもなれば顔なんてどうにでもなるさ・・・」



しわがれた声がひとつひとつ言葉を丁寧に発する。

良い教師の特徴だ。



< 49 / 52 >

この作品をシェア

pagetop