いぢわる兄は同級生
そのまま握られて固まるあたしの手を、そっと動かし始める水樹。
「そんな大きく切ったら、火、通んねっつうの。これくらいの大きさで切れ」
トン、トンッとあたしの切ったいびつな形のジャガイモを、また一回り小さな大きさに切っていく。
その様子は、周りからみればママに料理を教わる子供のよう。
「う‥‥うん」
緊張する頭で頷くと、よしと言ってあたしからスッと離れた水樹。
一気に身体の力が抜けるのと同時に、なんだか少しだけ名残惜しい気持ちも残る。
今のは、ただ切り方を教えてくれただけなのに‥‥そんなことにも意識しちゃってる自分が恥ずかしい‥‥。
水樹は、そのままあたしの隣にきて、じっと手元を見つめていた。
その視線に答えるように、水樹に教わった通り、少し小さめにジャガイモを切って水樹に見せる。
「こう‥‥?」
恐る恐る聞くと、水樹はたまに見せるあの優しい笑顔で笑う。
「そ、やればできんじゃん」
フワリと笑う水樹の表情に、あたしの胸はまた苦しくなる。
もし‥‥この笑顔があたしだけのものだったら‥‥。
そんなこと‥‥考えちゃいけないのに‥‥。