いぢわる兄は同級生
「バスケ部って、確か今日から合宿だよね?」
そう言った結衣ちゃんは、あたしのジャージ姿をクリクリの目で見つめる。
「う、うん‥‥‥」
「あたし、今部活終わってさぁ。ちょっと、バスケ部のぞきに行っちゃおうかなぁ‥‥とか思ったんだけど。もう今日は部活終わっちゃったみたいだね」
眉尻を下げてシュンと落ち込む彼女を見ると、すぐに水樹に会いに来たのだと分かった。
「‥‥あ、水樹に‥‥用事とかあった?呼んでこようか?」
「えっ!いいよいいよっ!ちょっと、顔見たかっただけだから!大丈夫‥‥‥‥」
「‥‥‥?」
両手をブンブン振りながら笑っていた結衣ちゃんの表情が、少し濁る。
その目線は、あたしの顔のすぐ下あたりだった。
「‥‥ゆ、結衣ちゃん‥?」
「‥‥‥‥あ、ご、ごめん!ボーッとしちゃってた‥‥えへへ」
不思議そうに顔をのぞきこむと、その様子はまたすぐにいつもどおりに戻る。
今の曇った表情は‥‥‥あたしの気のせいだったのかな?