いぢわる兄は同級生
そのまま彼女について歩く。
たまに、"えーと‥‥"とか、"こっちだったかしら?"などと、少し迷っている様子もあったが‥‥。
なぜだか彼女といるときは、暗い廊下でもあまり怖さを感じなかった。
「あなた、名前はなんて言うの?」
ようやく一階に降りたところで、彼女が口を開いた。
「う、上原桃子です‥‥」
「桃子さん?確か、一年生ってさっき言ってたわねぇ」
「あ、はい‥‥」
「うふふ、いいわねぇ。青春真っ只中じゃない」
「そうなんですか‥‥?」
「えぇ、高校ではきっといろんなことを学べるわ。青春なんて、私の歳になったら絶対に味わえないんだから。今を、今だけをちゃんと楽しんで。後悔しないように生きるのよ?」
「‥‥‥はい」
微笑みながらも彼女の言う言葉は、少し重みがあって、なんだかジワッと胸に染みる。