いぢわる兄は同級生
「愛野‥‥先生」
笑顔に愛がある彼女にはぴったりの名字だと思う。
「‥‥‥桃子ちゃん?」
ボーッと写真を見て立ち尽くすあたしに、大地先輩が手をヒラヒラさせる。
「きっと‥‥‥」
「え?」
「あ‥‥な、なんでもないです」
「?」
不思議と、彼女が幽霊だったと知っても怖くはなかった。
むしろ、彼女に会えて良かったと思う。
だって、それほどに愛野先生はあたしの背中を押してくれたから。
きっと、先生もこの高校に青春を取り戻しに来たのかな‥‥?
なんて‥‥‥。
ニコリと微笑んでいる愛野先生の写真に、あたしはペコリと頭を下げた。
「大地先輩、行きますよっ」
「えーっ、なんか桃子ちゃん嬉しそう?俺、ちょっと怖いんだけど‥‥」
バスケ部での肝試しは‥‥少し怖くて、でも、ちょっぴり心は暖かくなったあたしの夏の始まりだった。