いぢわる兄は同級生
▽いぢわるkiss
「桃子、そっちじゃないよ」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「桃子‥‥‥?」
「‥‥‥‥っえ、あ、何?」
放課後の掃除時間。
ゴミ捨て当番のあたしと雅は、ゴミ箱を持って焼却炉まで向かう。
「どしたの?今日朝からずっと、ボーッとしてるけど‥‥」
心配そうにあたしの顔をのぞきこむ雅。
「あ‥‥ううん。なんでもないよ」
口ではそう言ってるけど‥‥心の中で本当は、朝の水樹の言葉が気になってて‥‥‥。
今日の授業も上の空だった気がする。
「ならいいけど‥‥‥。なんかあったらいつでも聞くから言いなよ?」
雅のアーモンド型の瞳が、少しだけ垂れ下がる。
まだ自分でもなんなのか、よくわからないし‥‥変に雅に心配かけちゃってもダメだよね‥‥。
そう思ったあたしは、朝のことは言わないでおくことにした。
「うん、ありがと!」
いつもどおり笑顔でお礼を言うと、「桃子はやっぱり笑顔が一番!」と言って微笑んでくれた雅。
あたし、雅と友達になれて良かったって、改めて思った。