LOVE*PANIC




竣平は今既にその夢を叶えている。


だが、それ以前の彼を知っているため、一歌の中に竣平に対しての嫉みはなかった。


それよりも、彼の活躍は素直に嬉しいし、心から応援さえ出来る。


「あ、そうだ。来週、ライブの最終日の打ち上げ、来るでしょ?」


竣平がいきなり大きな声を出すので、一歌は一瞬驚いてしまった。


だがすぐに竣平の言葉を理解し、顔を綻ばせた。


「いいんですか?」


ライブのチケット自体は笹原に取ってもらっていた。


「いいよいいよ」


竣平は目を細めて笑い、そう言った。


「ありがとうございます」


一歌は竣平の何よりの魅力はその声だと思っていた。


喋っていても、歌っていても、何とも形容し難い声。


一言ではとても言い表せない声を竣平は持っていた。


それと同時に、それが歌手としては一番大切なことだとも思っている。


どんなに歌が上手くとも、在り来たりな声では人の耳には残らないし、何の印象も与えない。


そこまで考えた後、ふと思った。


自分の声はどうなのだろう、と。


今まで、何度も「歌が上手い」と言われたことはあった。


だが、「声がいい」と言われことは少ないのだ。


一歌の声を「いい」と言ったのは、社長と竣平くらいだった。


客観的にではないと分からないこと。


一歌の思考は一瞬そこで止まった。


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