LOVE*PANIC
笹原が取ってくれた座席は関係者席だった為、ステージがよく見える。
一歌はそこから、周りの一般席を眺めた。
広い会場にも関わらず、ほぼ満席で客層は様々だ。
竣平がいかに人気歌手かということを実感できほどだ。
誰も彼もが、ステージに竣平が現れるのを心待ちにしているのが、様子から見て取れる。
一歌の座席は関係者席の為、他の座席とは盛り上がりが少し違うので、更にそれが分かる。
一歌はそんな観客を眺めながら、その人達と同じようにライブの開始を待ち侘びた。
だが、手にしているバッグは少し大きめなので、どうにもライブの邪魔になりそうで、一歌は隣の座席に目をやった。
ライブ開始まで、あと幾らもない。
その時間に空いているということは、ここは空席なのだろう。
それなら、と荷物をそこに置こうと思ったが、一応やめておいた。
関係者席に来るのは、芸能人や、業界人だ。
となると、ぎりぎりに訪れる人もいるかもしれない。
一歌そう考え、バッグを膝の上に置いた。
目の前に広がるステージに、大勢の観客。
いつかは自分もこんな風になれるのだろうか。
少し前までは、そんなことを考えたりもした。
だが、今はちっともそんな風には考えられなくなっている。
きっと無理。
もう限界。
売れたい、と願う反面、一歌の頭の中でもう一人の一歌がそう言うのだ。
ここまで頑張ってきた結果が、今なのだ。