LOVE*PANIC
響の隣には彼の彼女らしい、小柄で可愛らしい子がいる。
その子が小さく頭を下げるので、一歌もそれにつられて頭を下げた。
有名アーティストに囲まれる無名アーティスト。
一歌は自分の周りの状況を考えながら、自虐的なことを思った。
どんどんと気持ちが落ちていくのがはっきりと分かる。
彼らと自分の何が違うというのだろう。
同じ世界にはいる。
だが、それだけだ。
同じ世界の、端と端にいるような感覚だ。
隣にいる裕樹が一歌の存在に気付いたらしく、丁寧に頭を下げてきた。
一歌は心の中で、気付かなくていいのに、と思いながらも同じように頭を下げた。
それが終わると、今度は響が裕樹に声を掛けた。
年は裕樹のほうが上だが、デビューしてからの年数は響の方が長い。
「莉子さんと流太さんも来るらしいですよ」
響の口から、他の有名アーティストの名前が出る。
一歌はそれを聞きながら、自分がその中に入ることは、もうないのかもしれない、とぼんやり考えた。
この先ずっと、自分は今の位置から抜け出せないのかもしれない、と。