LOVE*PANIC
「何で関係者席にしないの?」
美香子の声が車の中に響き渡る。
「だって、ライブ感味わいたいし」
修二はそれに対し、欠伸をしながら答えた。
「それはあんたの勝手でしょ? 私まで巻き込まないで頂戴」
美香子は感情の上がりと共に、運転を荒々しくなった。
「ごめんってば。だって、周りにばれた時、美香子さんいないと対処できないじゃん」
修二は俳優とも思えぬ棒読みで、そう返した。
その言葉のせいで、美香子の怒りは頂点に達し、運転は更に荒くなる。
「お願いだから事故らないで下さい」
修二は今度は本心から言葉を出した。
「私が、大事な商品に傷を付けると思ってるの?」
「……いいえ、思いません」
嫌な笑いを浮かべる美香子に、修二は苦笑いをした。
「ライブ開始まで時間ないんだから、飛ばすわよ」
美香子はそう言いながら、思い切りアクセルを踏み込んだ。
「制限速度は守って下さいね……?」
修二の言葉を聞いているのかいないのか分からないまま、車は走り続けた。