LOVE*PANIC




一歌は隣の人と楽しそうに話している裕樹の横顔を何となく見た。


知らない人だが、ここにいるということは何かしらの関係者なのだろう。


ぼんやりとライブの開始を待つのは、ただ時間が長く感じるだけだった。


これだけ大勢の人が竣平の歌を聴きにきている。


一歌がライブをやれるのは、精々小さなライブハウス程度だ。


やれないよりはましだといのは分かってはいるが、正直、寂しさは感じる。


そんな、どうしようもないことを比較していると、ついにライブが始まる時間になった。


会場は、ものすごい熱気と盛り上がりに包まれた。


会場全体が一つになっているのではないかと思えるような感覚。


全ての人が、ステージに立つ竣平を見て、彼の歌を聴いている。


実力、運、才能。


全てを兼ね備えた人だけが登れるステージ。


全てを兼ね備えた人だけが浴びることの出来る歓声。


一歌はライブが始まってものの数分で竣平の歌声に魅了され、落ちた気分などすっかり忘れていた。
















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