LOVE*PANIC
伝えたところで、修二の恋人になれる可能性なんて、一パーセントもないし、そもそも彼の恋人になりたいと思ったことはなかった。
だから、この気持ちを伝えることはない。
気持ちは完全に行き場を失っていたし、一歌はそんな気持ちを消すのには慣れていた。
一歌は昔から、何故か不毛な恋ばかりをしていた。
好きになる人に、彼女や好きな人がいることが多かったのだ。
そればかりではなく、きちんと付き合った人もいたにはいたが、大体はそうだった。
だから、伝えたって意味がないのだ。
そうやって、一歌はいつも気持ちを消してきた。
今回も同じことだ。
一歌は自身を納得させながら、テレビを点けた。
テレビの中から、葉瑠の歌声が流れてくる。
葉瑠の美しい歌声が、何故か一歌の心を掻き乱した。
何故だろう。
修二に、葉瑠よりも自分の方が歌が上手い、と言われたのだから、本来なら嬉しくなるべきところだ。
一歌はざわつく胸を押さえた。
葉瑠の歌声にただ、心を揺さぶられるのを感じた。