LOVE*PANIC
「お待たせしました」
修二の車を見付け、一歌は走り寄り、助手席のドアを開けた。
今日の修二はかなりラフな格好だが、それでもかっこよく感じてしまう。
「何処でもいい?」
修二に訊かれ、一歌は無言で大きく頷いた。
修二はそれを見ると、よし、と小声で言ってから、エンジンをかけた。
「まさか、来てくれると思わなかったし」
修二が優雅にハンドルを切りながら言う。
「何でですか?」
車内は距離が近すぎて、一歌は妙に緊張した。
一歌はどきどきと鳴る心音が修二に聞こえないことを願った。
「こないだまでは、ずっと嫌がってたじゃん」
確かに、ついこの間までは、修二の誘いを、一歌は断り続けていた。
だが、結局は断り切れない形にはなっていた。
それは、修二への気持ちを自覚していなかったからで、気持ちを自覚した今は、断る理由はない。
しかも、修二が最初に持ち掛けてきた提案も白紙になっている。
だけど、それを言葉にして修二に伝えることは出来ない。
一歌はどう答えたものか悩み、黙り込んだ。
「まあ、いいけど」
一歌が黙り込んで少ししてから、修二が口を開いた。
一歌の中に、訊いてみようかな、という思いが芽生えてくる。
何故、自分に、あんな話を持ち掛けてきたのか。
あの言葉には、どんな意味があったのか。
自分である必要があったのか。
自分でなくとも、誰でもよかったのか。
「あの……」
「だから、俺達に必要なのは、チームプレイなんかじゃない。
頭だよ、頭」
一歌が意を決して口を開いた瞬間、修二が言葉を被せてきた。