LOVE*PANIC
「お前と俺とでは、考え方が違う。
だから、チームプレイなんて不可能なんだ」
「それって……」
それは、ドラマの台詞だった。
修二は今回のドラマの台詞を再現してくれているのだ。
「ドラマに合わせようとか、思わなくていいんじゃん?
いっちゃんが、曲を聴いて、思ったように書けばいいんだよ」
修二はまるで一歌の悩みを見抜いているかのように言った。
「だって、曲はミディアムバラードだし、ドラマそんなに恋愛は濃くないし。
俺、いっちゃんが書く、素直な歌詞が好きだから、そんな感じでいいんじゃない?」
修二が口にした、「好き」という言葉が一歌の頭の中を回った。
自分自身のことを言ったわけではないことくらい、理解している。
それでも、その二文字は一歌の頬を染めるには十分過ぎた。
一歌は俯き、膝の上で手を握った。
「何で、あたしにあんな話を持ち掛けたんですか?」
一歌は勢いに任せて、その言葉を口にした。
「ん?
前からいっちゃんのファンで、ドラマの主題歌をやって欲しかったから」
修二は思いの外、さらりと返してきた。
先程とは違う修二の言葉が、一歌の頭の中で回った。
『前からいっちゃんのファンで、ドラマの主題歌をやって欲しかったから』
そんなのは、すぐに嘘だと分かった。
あまりにも白々し過ぎる。
一歌は修二が海外の映画祭で賞を獲ったのは絶対にまぐれだ、とまで思った。
そうとしか思えなかった。
一歌は「またまた」と笑ってその場をやり過ごしたが、本当は今にも泣き出しそうだった。
そして、本来は言えないような理由なんだ、と気付いた。