LOVE*PANIC
「葉瑠が、俺の恋人なんだ」
修二の言葉に、一歌の脳裏には、葉瑠の顔が浮かんだ。
アーモンド型の瞳に、日本人顔だが、何処か不思議な雰囲気を携えた顔立ち。
麗しいいでだち。
どれもこれもが完璧な女性。
「……本当はさ」
一歌が衝撃を感じる前に、修二が突如口を開いた。
「はい」
一歌はまともに修二の顔が見れなかった。
「主題歌の話、葉瑠に、てことだったんだよ」
「はい」
一歌は小さな相槌を打ち続けた。
「だけど、さすがに恋人と仕事する気にはなれなくてさ」
修二は本心を告げると同時に、だから君の気持ちには答えられない、と言っているようだった。
それに何より、発覚したらものすごく騒がれることになる。
だが、修二主演のドラマに、葉瑠の復帰後の主題歌など、かなりいい話題性だ。
「それで、いっちゃんに思い至った」
「え?」
突然出てきた自分の名前に、一歌は目を丸くした。
「葉瑠が、いっちゃんのファンなんだ」
「……まさか」
修二の言葉に、一歌は自分の耳を疑った。
そんなこと、有り得るはずがないと思ったのだ。
葉瑠はカリスマアーティストと呼ばれる程の存在で、一歌は売れない歌手だ。
それなのに、葉瑠が自分のファンなはずはない。
「本当。
デビューした時から、ずっと聴いてた。
だから、俺も君のこと、知ってたんだし」
確かに、そんな理由がなければ、修二のような人が、自分なんかを知っているわけがない、と一歌は一人で納得した。