ハッピーエンド
信じられない程に整った顔をしているが、それは無表情で葛西が拳銃を取り出した時も眉一つ動かさなかった。

まるで心が壊れてしまったような・・・そしてそれが原因で凄まじい憎悪を冷たい胸の内に秘めているような、そんな気がした。

「あなた達も疲れているでしょうから手短に言います。私には司という一人息子がいました。彼は半年前に交通事故で死んでいます」

葛西の言葉に誰かが息を飲んだ。

「司の車は白いスポーツタイプのクーペ。息子と正面衝突したのは紺色のセダンで相手は河合真喜子さん27歳です。場所は和歌山県新宮市内のある海沿いの道路、見通しの良い直線です」

「なんとなく、あなたの企みが分かってきましたよ」

仲埜が言ったが葛西は答えなかった。

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