月物語2 ~始まりの詩にのせて~
序章
赤国中央、そこには広大な砂漠が広がっている。
東に位置する華やかな王都とは違い、閑散とした街が点在するだけだ。
十年前までは、街を中心にたくさんの村が取り囲んでいた。
人々は街に集まり、市も栄え、砂漠の中にも活気があった。
しかしすでに、その街々の繁栄は面影すら残っていない。
ここ最近の日照りによる干ばつは甚だしい。
水を求めるならば、緑洲(りゅうじょう)のある村を訪れればよいが、それも限られてきた。
赤国の町も村も、縮小の一歩を辿るばかりだ。
それに伴うように、民の心も小さくなっている。
夜の砂漠は冷たい。
暑さと寒さが、容赦なく叩きつける過酷な地。
それでも、砂漠にはたくさんの人々が住んでいた。