月物語2 ~始まりの詩にのせて~
薄暗い廊下を歩く。
牢への道は、少し複雑だ。
行きと帰りで、道順はすべて覚えなければならない。
それも鍵を手に入れる作戦が気になって集中するのが難しい。
王の背中をちらりと見た。
小さい。
けれど、自分より堂々としている。
そうだ、ここは王と自分にかかっているのだ。
王は切り出しを作らなければならない。
できるのだろうか。
いや、できる。
さっきの緊張した背中は見間違いだったのか、力強さを感じる。
着いた。
牢越しには跪いた張湯がいる。
「鍵。」
礼の物言いは、ごく自然だった。
杜廷尉が自ら渡す。
カチャリ。
「持っていろ」
王が祝融に鍵を渡した。