月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「出ろ。
牢の外でいい。
朱雀と私で話したい。」
王は杜廷尉の目を見て言った。
二人の従者に下がらせる。
杜廷尉も牢を出た。
三人は牢越しに目を光らせる。
朱雀が王から離れた。
杜廷尉は朱雀の後ろ姿から目をそらさない。
―何をする気だ?
バシン。
軽快とも言える頬を張る音が牢内に響いた。
杜廷尉は目を疑った。
王が張湯の右頬に平手を入れたのだ。
従者たちも、驚いている。
張湯は打たれたままの角度で、俯いている。
バシン、バシン、バシン。
右頬、左頬、右頬。
続けざまに打った。
王の身体は小さいとはいえ、かなりの力で張湯の頬を打ったようだ。
赤い。
張湯は美男だが、それが余計にぶたれた頬を痛々しく見せている。