月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「痛いか?」
平手の音がやんだ静かな牢に、王の冷たい声がよく合う。
こういう一面があるとは思わなかった。
二人の従者はまだ固まっている。
「朝議が終わったら、お前を片付けるとしよう。」
嘲り。
王の背中は笑っていた。
はっと、杜廷尉は朱雀に目を移す。
祝融から目を反らしてしまった。
朱雀は落ち着いている。
まだ、怪しくない。
―いや、気がゆるまったという感じではないか?
杜廷尉は、ひやりとする。
鍵は、どこだ。
「お前を、すぐにでも切り刻んでやりたいわ。
そうだな。
お前の肉でも料理してもらおうか?」
ここからでは、朱雀の手元が見えない。
従者に合図を送ろうとしたが無駄だった。
従者たちは礼の言動に釘付けだ。
ごくりと唾を呑み込んで、喉を動かしているのが見えた。