月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「いや、お前の死体を見ながら、杯をあげるとしよう。
そうだな。蘭白酒に、蠍をつまみにしよう。」
王が高らかに笑うと、朱雀がそれ以上は、と止めた。
その手にはきちんと鍵が握られている。
―何も、なかったのか?
王は牢から出ると、杜廷尉を一別して歩き出した。
従者の一人が慌てて先行する。
朱雀が杜廷尉に鍵を押しつけると、そのまま追いかけていった。
後方を従者が挟む形で戻っていく。
杜廷尉は礼が去るまで頭を下げ、掌にある鍵を見つめた。
―油?
鍵が滑りで光っている。
やられたかもしれないと思いながら、杜廷尉は鍵を閉めた。
「災難が続くものだな。」
杜廷尉は、張湯にぽつりと言い、牢を後にした。
張湯はずっと床を見つめたままだった。