月物語2 ~始まりの詩にのせて~
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秘密会議。
いつもの男たちが集まっていた。
「どんな手を使ったんだろうな。
隊長が珍しく落ち込んでたぞ。」
獅子が思い出したように笑った。
「ほう。
杜廷尉がか。
それは誠珍しい。」
「主上は賢くあらせられる。
わしは主上の教鞭をとっておるが、砂漠が水を吸い込むように、知識を吸収する。」
皆詳細は知らないが、おそらく成功したのだろうと思った。
「ところで、獅子兄。
彩夏殿のことはどうするのです?」
劉巾が言った。
結局劉巾も関わらざるを得なくなったのだ。
「いやー、主上があんな鮮やかにすませるとは思わなくてな。」
「まさかお前、強行手段に出るつもりじゃったのか?」
「あは。
あはははは。」
獅子の空笑いに、皆がため息をついた。
「だって鍵は俺担当だしー、俺から俺が盗むってのも無理あるしー。」
平当が冷たい目で獅子を睨む。
「連れ出した後のことは考えてあんだけど…」
「当たり前じゃ。」
「主上に鍵を奪ってもらうしかないのでは?」
「お前たち、どれだけ主上に頼る気じゃ。
お前から鍵を奪っても不自然でない者はおらんのか?」
「東老師。
それはかなり難しいです。
獅子兄の腕は誰もが認めるもの。」
「確かに、武術で右に出るものなど相当限られていますな。」