月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「ここまで来たのですから、言い逃れは出来ませんよ。」
礼は声を低くして言った。
“向こう”を出るとき、全ての柵から逃れて軽くなるかと思っていた。
実際は押しつぶされそうなほど心が重い。
置いてきたものの重さを今になって感じる。
それは、武則天のせいではないことを礼はわかっている。
むしろ、自分で選択したと言っていい。
だからこそ、真実だけは知っておきたかった。
武則天はふうっと息を吐くと、堪忍したように話し出した。
「わかった。
覚悟はよいな?」
「えぇ。」