月物語2 ~始まりの詩にのせて~



「礼と私の話し相手になってもらうだけだ。
さっさと連れてこい。」



「はっ、はい。
ただいま。」



光燐が慌てて出て行った。



伯升はまだ降りない。



半刻も経たない内に、光燐ではなくやさ男がやってきた。



―あれは…



間違いなく花だろうと思った。



男は二人の前で跪く。



「よかった。
あなたを待ってたの。
名前も聞いてなかったから、光燐の勘に頼るしかなくて。」



「覚えてくださっていて、光栄に存じます。
祝融様におかれましては、お初にお目にかかります。
私は、花英(かえい)と申します。
主上、陽春のことは…」



「その話はやめましょう。」



束の間、王と花英に暗い影が落ちた。




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