月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「あなたが、上官のためにしか動かないのはわかってる。
けど、どっかで誤ったら、上官もろとも消されるわよ。
…って、ごめんね。
あなたまで巻き込むことになってしまって。」
王が花英に言うと、花栄は優しく微笑み返した。
「あなたのお役に立てることが、私たちの幸せですから、っと。」
花英に王が抱きついた。
ここぞとばかりに、伯升は朱雀に皮肉の笑みを投げる。
花英は王の頭を撫でながら言った。
「大体のことは察しがつきます。
私は何を?」
まがりなりにも、華官は御史の手の者である。
王が花英の肩から顔をあげると、朱雀が引き剥がした。
「彩夏の救出。
そのための獅子の手助けをしてもらいたい。」
朱雀が淡々と説明する。
「私達はまず、獅子に天術をかけ動きを封じる。
その間に、彩夏の牢の鍵を奪い、張湯を連れ出す。」
花英は青ざめながら黙って聞いている。