月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「私は行かないと思ったの?」
花英が王を見つめる。
「私にできることは少ないわ。
だからこそ、数少ないできることを逃したくない。
私は、城を出る。」
王が目を伏せた。
「明日だ。」
朱雀がはっきりと告げだ。
「張湯の鍵は手に入れた。
明日、決行する。
急がねばならん。
意味はわかるな?」
朱雀の花英に対する態度には棘がある。
先ほどの王に抱きつかれたことを根に持ったようだ。
「獅子の元に向かえ。」
花英は頷き、そして、王を見た。
「主上、あなたの望みを叶えましょう。」
それだけ言って、花英は出ていった。