月物語2 ~始まりの詩にのせて~
―3―
さすがに今日は、獅子は顔を出さなかった。
決行は間近だ。
―蘭白酒、明日寅の刻。
蠍、脱獄。
何度も心で唱えた。
それらの言葉は血死軍の暗号だった。
どうやら杜廷尉にも、そこまでの知識はなかったらしい。
だが、伯升め、と張湯は怒っていた。
―王に何たる言葉を吐かせるか。
実際、王の演技に気圧されて、危うく聞き逃すところだった。
共にやって来た杜廷尉たちも、王に釘付けになった。
その間、朱雀は鍵を粘土に型押ししていた。
かなり念入りに色々な角度から型をとっていた。
張湯は、ひたすら顔を俯かせて王の演技を本物にしたのだ。