月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「美しい…」
ぽつりと漏れた自分の声に驚いた。
今の言葉は宋春に聞こえただろうか。
急速に羞恥が込み上げてくる。
この牢内にいるのは、宋春だけだ。
彼は逃れらない。
小さな王。
獅子の言う通りだった。
小さな身体から、あの覇気はどこから生まれたのか不思議だった。
そしてあの時、王を前にして決心はついた。
―私が護ろう。
ふと、階下を走る音がした。
一人。
いや、三人だ。
先に駆け下りてきたのは伯升だった。
「隊長!」
鍵を開ける。
すぐに王と朱雀が追いついてきた。
「主上!」
張湯は思わず呼んでいた。
「行くわよ!」
王は微笑み返す。
ただそれだけで、十分だった。
四人は駆け出した。