月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「はぁ。」
それは確かに理解できない、と平当(へいとう)も思った。
「おい、取り敢えずそっちは置いとけって。
先ずは、柴秦(さいしん)のことだ。
多分王は、禁軍は出せねーぞ。」
いくら王位にあるとはいえ、着任間もない礼には禁軍を動かせる力などない。
それに―――。
「あの王が、民のために動くとは思えん。」
獅子の心を代弁するように、平当が言った。
「おそらく、柴秦様はもう動いているでしょうね。」
沈黙が流れる。
この国に必要な二人。
誰もがそう思っている。
だからこそ、雉院(ちいん:前王)も“彼を見逃してきた”。