月物語2 ~始まりの詩にのせて~
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王は奇跡的に馬を乗りこなしていた。
張湯にとって、それは驚くべきことだった。
天に選ばれるという人は、やはり特別なのかと思ってしまう。
「でも、街道なんて走っても大丈夫なの?
まあ、山道を走れと言われても、できるかどうかわかんないんだけど。」
「はい。
街道以外を走ると、痕跡が残りますから。」
「ふうん。」
よく話す王だった。
二人の会話は、殆ど風に流されてしまう。
時々、こうして会話が成り立つのだ。
前方の二人は仲があまりよくない。
同じものを欲しているわけではないのに、何かを競争しているような所がある。
朱雀がやたらとこちらを気にしているのがわかった。
彼女は彼の主なのだ。