月物語2 ~始まりの詩にのせて~
5章 悲憤慷慨 ~砂漠の実状篇~
―1―
栄楽は子州に入ってから、さらに物流を観察した。
子州より丑州の方が物流は活発だ。
しかし、一つだけ飛ぶように売れるものがある。
それが売れることによって、赤国全土の物価が乱れる。
最初は子州から丑州に流れた。
その道はすでに太い。
それを求める民が多くいるからだ。
子州丑州での闇塩の道は、ほぼ出来上がった。
塩は権力だ。
その塩で、一儲けする。
自分のためではない。
国のためでもない。
もちろん民のためでもない。
自分と志を同じくする者たちのためだけにある。
闇の銀ではあるが、自分たちにとってそれは光だった。