月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「兄貴の席は俺が用意しましたぜ。
既に話は通してあって、腹違いの出来る兄ってことにしてるからよ。」
荻青は嬉しそうに笑った。
正式な兄弟にしてもらった気でいるのだろう。
「軍師というところか。」
「まぁ、軍じゃないが、そんなところで。」
「しかし、お前も短期間でよくそんな地位まで登れたな。」
「孫四娘(そんしじょう)のお陰ですぜ。
今では方狼(ほうろう)のお気に入りだ。」
方狼は赤庭団の頭領だ。
「しかし、あの気の強い孫四娘がよく身体まで許したな。」
「それが、方狼の野郎、なかなかの色男で。」
それならあり得ると栄楽は思った。
孫四娘は、男の見た目に弱い。
しかし、そこが欠点でもあった。
「塩はもういい。
そっちの都合に合わせて入団する。」
荻青はやはり笑って頷いた。