月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「彩夏様、これは私が縫ったのですよ。」
別の少女が刺繍を見せにきた。
何の模様かさっぱりわからない。
「彩夏様、俺はこの体術でみんなを護ってみせます。」
少年が構えを取る。
横から別の少年が蹴りを入れた。
取っ組み合いが始まる。
老人がのんびりと歩いて来て、二人を投げ飛ばした。
やはり、ここはどこかおかしい。
何故、老人がこんなにピンピンしているのだ。
何故、こんなに子どもたちがいるのだ。
何故、自分は受け入れられているのだ。
視界がぼんやりしてきた。
このまま、何も見えなくなってしまえばいい。
「彩夏様!」
子どもたちの声が遠くで聞こえた。