月物語2 ~始まりの詩にのせて~



「とにかく、これだけは駄目なのです。」



頭巾の男が必死に止める。



少年の従者のような口振りだ。



先ほどの視線の鋭さはもう感じられない。



「何か、この品にご不満でも?」



「いや。」



もう一人の男が言った。



護衛なのか剣を持っている。



「あれを見せてもらえるか?」



髪飾りを指していた。



「女物ですが?」



「いいのだ。
見ての通り、我が主は麗しいのでな。」



主と言われた少年は、猫の人形を渋々諦め、簪を手に取った。



一行が去ってからも、猫の人形は飛ぶように売れた。



自分の仕事は出来るだけ猫の人形を売ることだ。






< 156 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop