月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「とにかく、これだけは駄目なのです。」
頭巾の男が必死に止める。
少年の従者のような口振りだ。
先ほどの視線の鋭さはもう感じられない。
「何か、この品にご不満でも?」
「いや。」
もう一人の男が言った。
護衛なのか剣を持っている。
「あれを見せてもらえるか?」
髪飾りを指していた。
「女物ですが?」
「いいのだ。
見ての通り、我が主は麗しいのでな。」
主と言われた少年は、猫の人形を渋々諦め、簪を手に取った。
一行が去ってからも、猫の人形は飛ぶように売れた。
自分の仕事は出来るだけ猫の人形を売ることだ。