月物語2 ~始まりの詩にのせて~
この猫は、各地にある黒猫の社に奉納される。
猫はこの国では不吉な動物だ。
それがあえて売れるのは、この猫が不幸を吸い取ってくれると民は信じているからだ。
社で猫は焼かれる。
焼かれた猫が炭になって黒くなることが、黒猫の社の由来だ。
猫が焼かれることで、不幸なことも焼き尽くされ、幸せが訪れるという。
馬鹿げている、と猛広は思う。
だが、それにすがらなければならない民が多くいることも事実だった。
人が集まってきた。
夕刻までは座る暇もなさそうだった。