月物語2 ~始まりの詩にのせて~
田舎の宿舎。
まだ手配が回っていないようで、王をやっと屋根のある場所で休ませることができた。
「隊長。
この先の町はダメだ。
街道も兵でいっぱいだ。」
偵察に出させた伯升が戻ってきた。
「おい!」
伯升が王に向かって何かを投げた。
反射的に王はそれを受け取った。
王の顔がみるみる明るくなる。
飴入りの鳥の人形だ。
朱雀は伯升を睨んだ。
その鳥は朱雀を象徴するものだからだ。
伯升はにやりと笑う。
「ありがとう、伯升。」
王が満面の笑みを伯升に向けた。
一瞬、伯升はたじろいだ。
今回ばかりは朱雀も伯升に文句は言わなそうだ。