月物語2 ~始まりの詩にのせて~
―2―
黄国から送還された礼は、以前のように大々的に迎えられた。
以前とは違い、その場には朱雀がいた。
亡き劉向(りゅうこう)の後を継いだ劉巾という者が手を引く。
赤天殿を出た礼は、朱雀だという目の前の人物をまじまじと見た。
―びっ、美青年…
人払いをした部屋で、朱雀は礼に跪いた。
「………。」
朱雀は、黙りこくっていた。
いざ礼を前にすると、朱雀は考えに考え抜いた文言すら忘れてしまったのだ。
やっと吐けた息に乗ったのは、言葉でも何でもないかすれた声。
―何か言わなくては。
朱雀は焦り始めた。
けれど、浮かんだ言葉は全て薄っぺらいような気がして、もう本当にどうしてよいのかわからなくなっていた。