月物語2 ~始まりの詩にのせて~
丑の刻、花英が潜む茂みの先で、蹄の音が聞こえた。
城外の街道である。
間違いない。
「獅子殿。」
花英は街道に出た。
獅子は花英の方に馬首を回した。
月明かりで、少し汗ばんだ獅子の皮膚が光っている。
驚く様子もなく、近寄ってきた。
影が筋肉の隆起を強調させている。
「よう。
こんな時間になにしてんだ?」
獅子が馬から下りながら言った。
「私は花官ですよ。」
「それもそうだ。」
悪びれる風もなく、ニヤリと笑う。
花英は獅子のそういうところが好きだった。