月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「『天界』とは、死後の世界だったのね。」
『死んでくれ』
牢で見つけた朱雀はそう言った。
それで礼はこの世界が何なのか、確信したのだ。
東苑と房厨殿に行った時、一人の女に目が釘つけになた。
礼の知り人だった。
いや、知り人かどうかわからなかった。
姿形が同じだったが、礼の知る彼女は“死んだはず”だった。
朱雀が顔をあげた。
「王は、赤国にいるものから選ばれます。
天から告げられた人物、つまりあなたをずっと探していました。」
やっと朱雀が口を開いた。
「けれど、私は見つからなかった。
なぜなら、私が“生きていたから”」