月物語2 ~始まりの詩にのせて~
誰のおかげというのは、おそらく礼のことだろう。
山中で捕捉されかけたとき、奇策を思いついた。
動物を使った攪乱作戦だ。
朱雀に暗示をかけさせ操り、隙をついて逃げおうせた。
「だからって隊長に迷惑をかけていいってわけじゃない。」
「迷惑だと!
お前―…」
「はいはい、そこまで。
この先に緑洲があるはずです。
礼様、そこまで頑張りましょう。
日が暮れる前に着かなければ危険です。」
張湯は主上ではなく、礼と呼ぶようになった。
主上と呼ばせるわけにはいかない。
格好も、男装をしている。
朱雀は赤(せき)という名にした。