月物語2 ~始まりの詩にのせて~
「危険って?」
礼は覇気のない声で聞いた。
二人をとめることに張湯は慣れてきている。
「夜の砂漠は寒いのです。
寒暖差で、身体を崩しかねません。
それに…」
「それに?」
「賊徒がいるからな。」
「おい!
余計なことは言うな!」
また朱雀が怒鳴る。
「礼、安心して。
あなただけは、命をかけて守ります。」
朱雀は太陽と負けじ劣らずの眩しさで微笑んだ。
「どうせなら、飛んで町まで連れてってちょうだい。」
張湯は苦笑する。
暫く礼は放心状態で歩いた。
その方がいくらか楽だった。
二人の喧嘩する元気な声が、雑音のように聞こえてくる。