月物語2 ~始まりの詩にのせて~
黒いもやもやとしたものが蠢いている。
よく見ると、人影が列を成していた。
「申し訳ございません。
賊徒かと思いまして。」
「いいの。
怪我ないし。
とりあえず、駱駝に乗せて。
このままじゃ砂の上で煮えちゃう。」
朱雀は張湯を一瞥すると、礼を抱え上げた。
「隊長、どうやら村人の集団みたいです。」
人影を眺めていた伯升が言った。
「なぜこんなところに。」
「賊徒の変装って訳でもないようですが。
俺、ちょっと見てきます。」
伯升が走り去った。
駱駝も走れたのか。
礼たちは伯升が戻るまで動かなかった。
じっとしていると、ますます熱い。
鍋で煮詰められる気分だった。