月物語2 ~始まりの詩にのせて~
話し終えた張湯が、困った顔で駱駝を寄せた。
「礼様、もう少し先の村にしましょう。」
「それは危険だからってこと?」
「予定していた場所が、襲撃された村からかなり近いところですので。」
礼はため息を付いた。
「仕方ないわね。」
「それと、村人を同行させてもよろしいでしょうか?」
「何を言っている!」
朱雀が怪訝な顔をする。
「朱雀、いいじゃない。
村人困ってるのでしょう?
私たちが民を見捨ててどうするの。」
「しかし、どうすると言うのです。」
「もちろん、後方を歩かせます。
村人は州境の城に向かおうとしていたようです。」
「なら、なぜ同行を?」
「今の州境の城は、行っても無駄です。」
「どういうこと?」
張湯は一度目を瞑って、それから礼を見た。