月物語2 ~始まりの詩にのせて~
汗で水分は無くなっていたと思ったが、涙は出るらしい。
張湯が驚いているのが目に見えてわかる。
「銀は私が出す。
私にできることはそれくらいしかないんだから。
けど、煩わしいなんて、そんなこと思ったりしない。
私は、民の力になりたい。」
「礼…。」
隣にいた朱雀が、駱駝の背に乗ったまま優しく頭を撫でた。
張湯は駱駝から降り、突然、礼の足下に跪いた。
「このときより、わたくし張湯は、主上への忠誠を天に誓います。」
「えっ?」
朱雀の手が一瞬ぎこちなく頭上を滑った。
「これは、貴方への最も強い忠誠です。
天に、張湯は宣言したのです。
受けるか受けないかは、貴女の自由です。」