月物語2 ~始まりの詩にのせて~
この村の村長が入ってきた。
村長といっても、まだ三十過ぎたくらいの若い男だ。
「芥(かい)さん!
まさかあなたにも?」
「気づかないのは、へっぽこ商人くらいでしょう。」
確かに、そんな商人もいた。
「十分な銀と品を頂きました。
彼らは一時保護という形でお預かりいたしましょう。
幸い、この村には空き小屋が幾つかありますので、徐々に独立してもらおうと思います。」
「芥さんの村には入れないの?」
芥は少し困った顔になる。
「村人が増えると、それだけ税と作物を多く納めなければなりません。
彼らは全員で30名ほど。
雇い入れたことにしようと思います。」
「そう。」
礼はわかっていないだろう。
この地の雇い入れとは、人身売買を意味する。
「それにしても、この村は緑洲もないのに、何でこんなに裕福なの?」
「お前、相変わらずバカだな。」
村長が軽快に笑った。
伯升の言葉にかっとなったが朱雀は抑えた。
礼に自分のことで怒るなと言われている。